2015年9月16日水曜日

銘柄を明かさない理由36

登場人物紹介
・先輩:Yの取引口座があるA証券の長期運用部門を担当する天才女性トレーダー
・後輩:先輩の後輩
・A:A証券に取引口座を持つ、若くして頭脳派の無敗の個人投資家
・J:A証券に取引口座を持つが、自身の口座では取引きしない無敗の個人投資家
・先生:「売り」「買い」のどちらもとれる大物相場師
・Y:運用額は小額ながら、無敗の個人投資家、当プログの管理人

男が最初に分析した結果、その株は「買い」だった。
男がその株に興味を持ったのは、あるプログを読んだことがきっかけだった。
最初は、プログの管理人が調子にのって、その株を取り上げていると思った。
購入予定の理由を解説していたが、あまりにもレベルの低い分析だった。

だが、そのプログの管理人は10年間、無敗で、年平均20%を超えるリターンをあげていた。
男は、管理人が購入予定だという、国内最大の金融グループを徹底的に調べることにした。
2002年からの事業別収支、国内・海外別収支等々、調べた項目は膨大な数だった。
少し前に最終チェックを終えた男の結論は、やはり「買い」だった。

その男は学生時代に、家族全員を亡くし、天涯孤独の身になった。
多額の保険金を受け取ったが、何の感情もわかなかった。
やがて、男は家族の思い出が詰まった家を売り払い、通っていた大学も中退した。
その後、ヒマ潰しに始めた株式投資で、男の資産はいつしか億単位になっていた。

その男は、自分で自分のことを無敗の相場師Aと称していた。
画面に開いていた無数のファイルを一気に閉じると、Aは買いの時期の検討に入った。