2015年9月18日金曜日

銘柄を明かさない理由37

登場人物紹介
・先輩:Yの取引口座があるA証券の長期運用部門を担当する天才女性トレーダー
・後輩:先輩の後輩
・A:A証券に取引口座を持つ、若くして頭脳派の無敗の個人投資家
・J:A証券に取引口座を持つが、自身の口座では取引きしない無敗の個人投資家
・先生:「売り」「買い」のどちらもとれる大物相場師
・Y:運用額は小額ながら、無敗の個人投資家、当プログの管理人

A証券の長期運用部門は、無敗の個人投資家達と同じ運用をしていた。
同じ株を同じ時期に売り買いすることで、長期間にわたって、高いリターンをあげていた。
彼女達が運用する株数は、無敗の個人投資家達の株数とは比べ物にならなかった。
その日、彼女達は壮絶な経験をすることになった。

2015年9月18日 06:00
Yは、その日に子供ファンドの買いを入れると決めていた。
以前から、株を保有しているものは、動くべきときではない。
だが、新たに株を始める配当狙いの個人には、絶好の買付日だと考えていた。
子供ファンドの買い注文を入れると、PCを閉じ、出勤するべく支度を始めた。

同日 08:30
A証券の長期運用部門では、朝のミーティングが行われていた。
「今朝、Yの買い注文を確認した。
かねてからの打ち合わせ通り、本日中に目標株数を仕込む。
大型連休前なので、売り相場になる可能性が高いが、くれぐれも気は抜かないように」

同日 09:00
A証券の長期運用部門は、活気に包まれていた。
「Yの買い注文1,200株、全て寄り付きにて約定しました」
「よし、慎重に買い進めろ、目標買値は徐々に切り下げていけ」
その頃、彼女達は今日の相場は楽勝だと思っていた。

同日 10:00
「先輩、Aが保有していた株の一部を売りに出したようです」
「売りに出したのは、どの株だ」
「Aがメインで持っていた株です」
「今日は仕込みの日だ、まさか全て売ったりはしないだろ」

同日 11:30
「先輩、大変です、Aがメイン株全てを売却、Yと同じ株を大量に仕込みました」
「何だと、保有銘柄を入れ替えたのか」
「どうしましょう、Aのメイン株は、ウチも相当な数、保有していますが」
「少し考える、12時に緊急ミーティングだ」

同日 12:00
「Aの動きに対応するため、買い方と売り方の2チーム体制にする。
買い方チームは、当初の目標数の倍を仕込め。
売り方チームは、Aのメイン株だった株を全て売り抜けろ。
目標株価の変更は、各チームリーダーに一任する、何としてでも目標を達成しろ」

同日 14:30
トレーディングルームは、戦場の様相を呈していた。
「目標売値での買い手がいません、目標売値の変更をお願いします」
「つい5分ほど前に変更したばかりだ、あきらめるな」
トレーディングルームには、悲鳴と怒号が飛び交っていた。

同日 15:30
取引時間が終わってから、誰も席を立たず、誰も何も喋らなかった。
ようやく、長期運用部門を担当する女性トレーダーが言葉を発した。
「急な変更にも関わらず、目標を達成できたのは、皆のおかげだ。
今日は早く帰り、この連休はゆっくり休んでほしい、本当によくやった、感謝する」