2016年2月13日土曜日

銘柄を明かさない理由R36 天使と魔王(前編)

第36話 天使と魔王(前編)

天使の笑顔をもつ男は思った、なぜ管理人は投資手法を発信しているのか。
一度、会って話を聞いてみたい。
男はブログのメールアドレスに、メールを送信した。
男が送信したメールは以下の内容だった。

「はじめまして、ブログを読ませていただいた株式投資の初心者です。
無限ナンピンの投資手法には驚きました。
なぜ投資手法をブログで発信されているのでしょうか。
もしよろしければ一度、会ってお話をお伺いできたらと思います」

数日後、ブログの管理人から男に返信のメールが届いた。
「来週の土曜、17時に兜神社で待っている」と。
兜神社なんて聞いたことはない、どこだ、男はネットで検索した。
兜神社は証券界の守り神で、東京証券取引所のすぐ近くにあるらしい。

当日、男は兜神社へ向かうべく、自宅を出た。
本当に管理人は会ってくれるのだろうか、男は電車を乗り継ぎ、兜神社へ向かった。
天使の笑顔をもつ男が兜神社に着いたとき、狭い境内には1人の男がいた。
その男は振り返るといった、「君がメールをくれた相場師かい」

男に聞かれて、天使の笑顔をもつ男は「はい」と答えていた。
男は、どこにでもいる会社員のようで、スーツ姿にコートを羽織っていた。
「先ずは兜神社に願掛けだ、願掛けが終わったら、行きつけの店へ行こう」男はいった。
天使の笑顔をもつ男は、男にいわれるがまま、賽銭を投じ、願掛けをした。

男が連れて行ってくれた行きつけの店は、どこにでもありそうな定食屋だった。
明かりは点いているが、のれんは掛かっておらず、「本日貸切」の札が下がっていた。
男は手慣れた様子で引き戸を開けると、店の中に入った。
男に続いて中に入ると、店主らしき女性が「いらっしゃいませ」と笑顔で出迎えてくれた。

壁には、きつねうどんやカレーライスの値札が並んでいる。
天使の笑顔をもつ男は思った、庶民的な店だ、しかし居心地はよさそうだと。
使い古された椅子に腰掛けた天使の笑顔をもつ男に、男はたずねた。
「好き嫌いはあるかい」と。

天使の笑顔をもつ男は、「特に好き嫌いはありません」」と答えた。
「いつものを頼むよ」、男は女性店主にいった。
「何がいつものよ、何年ぶりだと思っているのよ、あの時のを頼むでしょ」
女性店主は笑いながら、厨房にむかった。