2016年5月27日金曜日

銘柄を明かさない理由R69 初めてのお見合い

第69話 初めてのお見合い

小柄な小動物を連想させる女性は、裕福な家に生まれ育った。
女性は3人姉妹の末っ子で、姉2人はとっくに結婚していた。
自分も結婚したいと思わないわけでもない。
だが、中学、高校、大学と女子校で、今まで男性と付き合ったことはなかった。

現実の男は、アニメやゲームの男と比べると見劣りし、付き合う気にはなれなかった。
休日は、家でアニメやゲームに没頭するだけで幸せだった。
どうして、アニメやゲームのヒーローみたいな男はいないのだろう。
私のヒーローはいずこに、小柄な小動物を連想させる女性はいつも思っていた。

休日、自室で新作ゲームに没頭していると、両親から呼ばれた。
両親から見合いをしないかといわれた。
どうせ、見合いの男なんて、たいした男じゃないと、釣書を手に取った。
そこには爽やかな笑顔の青年がいた、女性は即答でOKした。

見合いの当日、小柄な小動物を連想させる女性は、初のお見合いに緊張していた。
これはゲーム、焦らずにいつもどおりにやれば、勝てる。
大丈夫、私は負けたことがない。
そこまで考えたとき、見合いの相手が現れた。

釣書の写真どおりの爽やかな笑顔で、両親を伴い青年は現れた。
会食が始まった。
両親たちは当たりさわりのない会話をしている。
高価そうな料理だったが、ほとんど箸をつけずに残した。

「さあ、若い方同士、2人で話でもしてらっしゃい」といわれ、2人は散策した。
青年がいった、「もし一緒になったなら、君には金銭面では苦労をさせないよ。
同世代の中では、比較的、年収は恵まれているほうだと思っている」
私の方が収入が多い、と小柄な小動物を連想させる女性は思ったが、いわなかった。

青年がいった、「できれば、一緒になったら専業主婦になって欲しい。
子どもがいつ帰っても、母親がいる家庭が理想なんだ」
私の方が稼いでいるのに、専業主婦になれっていうの、ムリだわ。
小柄な小動物を連想させる女性は思ったが、いわなかった。

翌日、ある証券会社の資産運用を担当する部署、通称アルカディア。
小柄な小動物を連想させる女性社員は、近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
何があったのか知らないが、今日はこちらから話しかけない方がよさそうだな。
女性社員と目が合った無敗のクイーンは、さりげなく新聞で顔を隠した。