2016年6月8日水曜日

銘柄を明かさない理由R78 関西の気高き相場師たち

尊敬する実在の相場師を、ご本人の承諾なしに登場させています。
もし不快な思いをされたのであれば、ご一報いただければ改稿いたします。

第78話 関西の気高き相場師たち

難波の女帝の計画は、恐ろしい計画だった。
業績が低迷している大手企業の株を売る。
株価が下がったところで、大量の買いを入れる。
過半数を超える株を入手したら、外資企業に売り渡すというものだった。

淀屋の一族の親族会議。
難波の女帝と呼ばれる女相場師はいった。
「この国は危機感が欠如しとります。
役人の天下り先の大手企業を外資企業に売り渡せば、少しは目が覚めるはずやわ。

この大手企業の株の時価総額は1兆円もおまへん。
ウチら一族の力を合わせれば、過半数の株を取得することは簡単や。
一気に売って、安値になったところを大量に買うんや。
気づいたときには、この大手企業は淀屋一族の会社になってるんよ。

これが成功すれば、関東のお偉方も目を覚ます。
本格的な景気対策に取り組むはずや。
今こそ、淀屋が表舞台に出るときや」
会場は盛大な拍手に包まれ、閉会した。

難波の女帝には抜かりがなかった。
親族会議で賛同を得た難波の女帝は、意図的に情報をリークした。
「えらく下がる株があるんやけど聞きたいでっしゃろ」
話を持ちかけられたほとんどの者が銘柄を知りたがり、事前に情報を手に入れた。

だが、中には毅然とした態度を貫く相場師たちもいた。
関西で名の知れた大物相場師である株銀もその1人だった。
「株は成長する企業に出資し、ともに利益を享受することだ。
売り方では参戦しない、わるいが他をあたってくれ」

古都京都でその名を知られた大物相場師である鳳凰堂も同じだった。
「私は私のやり方で相場に挑んできた。
人の意見に左右されることはない、お帰り願おう」
他にも難波の女帝の提案を一蹴した関西の相場師は少なからずいた。

せっかくの儲け話を断るなんて、何を考えてるんやろ。
あとで文句いうてきても知らんさかいな。
まあええわ、そろそろショータイムの始まりやで。
難波の女帝は、不敵な笑みを浮かべた。