2016年6月9日木曜日

銘柄を明かさない理由R79 至急の調査依頼

第79話 至急の調査依頼

都内のある調査会社。
オフィスで仕事をしていた男に、女性社員が声をかけた。
「社長がお呼びです、今すぐ社長室へ来てくださいって、また何かよくないことされました」
「前にもいったろ、心当たりは山ほどあると」、男は社長室へ向かった。

社長室に着いた男は、軽くノックをした。
「入りたまえ」、男が社長室に入ると、社長は窓の外を見て、しばらく黙っていた。
「遠慮は要らん、掛けたまえ」、太った貫禄ある社長が振り向きながらいう。
とっくに、男はソファに座っていた。

「す、座っていたのか、まあいい」、社長がバツがわるそうにいった。
「また仕事の依頼ですか」、男はたずねた。
「ああ、そうだ、我が社のお得意様からの依頼、しかも至急とのことだ」、社長がいう。
「調査する内容はどういったことでしょう」、男が聞いた。

「ある大手企業を乗っ取る計画があるらしい、本当なのかを調べて欲しい」、社長がいう。
「誰が乗っ取ろうとしているのですか」、男はいった。
「淀屋という一族で、首謀者は難波の女帝と呼ばれている相場師らしい」、社長がいう。
「ちょっと待ってください」、男はいった。

「我が社のお得意様は、世界有数の保険法人ですよね。
なぜ保険法人が日本企業の乗っ取りについて、調査を依頼するのですか」、男はたずねた。
「乗っ取ったあと、外資企業に売り渡すらしい。
大手企業が外資企業に売り渡されれば、何らかの影響があるのだろう」、社長はいった。

「調査に与えられた期間は」、男がたずねた。
「お得意様は3日後の報告を希望している、どうだ、できるか」、社長がたずねた。
「できなくても、やらざるをえないのでしょう」、男はいった。
「当たり前だ、お客様は神様だからな」、太った社長は笑いながらいった。

席へ戻った男に、女性社員が声をかけた。
「飲み物をお持ちしましょうか」
「ありがとう、だが今はいい」、男はいった、
「お役にたてることがあるなら、何なりと仰ってください」、女性社員がいった。

「自分のことは自分で何とかするよ。その気遣いだけで十分だよ」
3日間で大手企業乗っ取り計画が本当なのか突き止めろか。
どうすれば、突き止めることができる。
キーワードは「淀屋」に「難波の女帝」か、男は考え始めた。