2016年6月11日土曜日

銘柄を明かさない理由R81 敵地へ

第81話 敵地へ

翌日、無敗のクイーンと無敗の天然ことテンは大坂へ向かう新幹線の中にいた。
昨夜、男から淀屋一族の計画を聞いた無敗のクイーンは即座に大阪行きを決めた。
その場で、無敗のクイーンは淀屋に電話した。
数コールで淀屋は出た、「はい、どちらはんでっか」

無敗のクイーンが名乗ると、淀屋はたちまち嬉しそうな声になった。
「こんな時間に別嬪さんから電話貰えるとは、まさかワテの声が聞きたかったんでっか」
単刀直入に無敗のクイーンは明日、大阪へ行くが会えるかと聞いた。
「ワテに会いに大阪へ来てくれるんでっか、何をおいても会いにいきますわ」

待ち合わせの時間と場所を決めると、無敗のクイーンは通話を終えた。
「明日の12時、場所は淀屋橋だ」、無敗のクイーンは男にいった。
「承知した、では現地集合で」、男は立ち去った。
展開の早さに、小柄な小動物を連想させる女性、テンは目を白黒させていた。

「初めて乗りましたけど、結構、混んでるんですね」、テンがいう。
「新幹線に乗るの、初めてなのか」、無敗のクイーンが驚きながらたずねる。
「普通車に乗るの初めてなんです、いつもグリーン車ばかりだったんで」、テンがいう。
聞くんじゃなかった、無敗のクイーンは寝ることにした。

別の車両には、調査会社の男がいた。
まさか小柄な小動物を連想させる女性が、アルカディアの一員だったとはな。
世の中、広いようで狭いもんだ。
男は売店で買った新聞の株式欄を開いた。

数日前から、男の保有する大手企業の株が下がり始めていた。
同業他社に比べて、下げが際立っていた。
しかも、今までにない大きな出来高を伴う下げだ。
まさか、この大手企業がターゲットなのか、男は嫌な予感がした。

大阪の淀屋橋。
時刻は正午になろうとしていた。
高級ブランドのスーツに身を包んだ1人の男が人を待っていた。
通りを行きかう人々は一様に男を見ていく。

高級ブランドのスーツに身を包んだ男は淀屋だった。
今日は別嬪さんのために決めてきましたで、そろそろ、約束の時間や。
駅の方向から歩いてくる無敗のクイーンを見つけた淀屋は呆気にとられた。
な、なんで、モップちゃんがおんの、しかも隣には男もおるやんか。