2016年6月29日水曜日

銘柄を明かさない理由R96 西の男と東の女

第96話 西の男と東の女

難波の女帝との仕手戦が終わったある日。
無敗のクイーンはコンビニへ向かっていた。
通りの向こうから、派手な身なりの男が両脇に男を従え歩いてきた。
奴は淀屋、なぜ奴がここにいる。

「久しぶりだな」、無敗のクイーンは淀屋に声をかけた。
両脇の男が、淀屋の前にさりげなく回りこむ。
淀屋がにこりともせずいう、「はて、どちらさんでっか」
「前に会っただろう」、無敗のクイーンがいう。

「記憶にありまへんな、人違いでっしゃろ、会合があるよって、ほな」、淀屋がいう。
「きさま、何があった、バカにしているのか」、無敗のクイーンがいう。
「何もバカになんかしてまへん、記憶にないだけですわ」、淀屋は立ち去ろうとした。
「それ以上、いいかがりをつけると、タダじゃすみませんよ」、ボディガードの男がいう。

「面白い、やれるものならやってみろ」、無敗のクイーンがいう。
「リーダー」、声がした方を見ると、無敗の天然ことテンが駆け寄ってくるところだった。
「今日はお弁当がないので、一緒にコンビニにいこうと思ってたのに。
置いていくなんて、ひどいじゃないですか」、テンは怒っていた。

テンは淀屋に気づいた。
「あ~っ、淀屋さんじゃないですか」
「ど、どちらさんでっか」、淀屋が動揺しながらいう。
「何いってるんですか、私ですよ、私、モップちゃんですよ」、テンが淀屋に近づきいう。

「し、知らんな」、淀屋がいう。
「昨日も電話で話したじゃないですか、ひ、ひどい」、テンの目がうるうるしだした。
やばい、無敗のクイーンは止めようとしたが遅かった。
テンは子どものように声をあげて泣き出した。

ボディガードたちは困惑しながら、淀屋とテンを交互にみている。
道行く人も何事かと、2人を見ながら通り過ぎていく。
「ごめんごめん、冗談や冗談、モップちゃんのこと忘れるわけあらへん」
淀屋が頭をかきながらいった。

淀屋の声を聞いたテンは、ぴたりと泣き止んだ。
「本当に覚えてます」、テンが淀屋に聞く。
「当たり前や、ワテはモップちゃんのこと忘れたことおまへん」、淀屋がいう。
この2人、付き合っていたのか、無敗のクイーンと淀屋のボディガードは呆気にとられた。