2016年9月6日火曜日

銘柄を明かさない理由R124 成功報酬

第124話 成功報酬

「先生、起きてください、着きましたよ」、声が聞こえる。
「ここは」、嗤う男が目をこすりながらいう。
「ご自宅のマンションの前ですよ」、年齢不詳の男がいう。
どうやらタクシーの中で眠ってしまったらしい、嗤う男は思った。

「すまない、寝てしまったようだね、今夜は楽しかったよ、ありがとう」
嗤う男はいい、開いていた後部座席のドアから降りた。
「こちらこそ遅くまですいませんでした、おやすみなさい」
年齢不詳の男がいい、タクシーは走り去った。

嗤う男は、タワーマンションの自宅へ戻った。
朦朧とする意識の中、着ていた服を脱ぎ捨てバスルームへ向かった。
壁に寄りかかりながら、嗤う男は冷水のシャワーを浴びた。
冷水のシャワーを浴びていると、少しずつ思い出してきた。

あのウィッグの女、何を飲ませた。
銀座の高級クラブなので、油断してしまった。
誰の仕業か知らんが、このままですむと思うなよ。
嗤う男は、冷たいシャワーを浴び続けた。

翌日、天使の笑顔をもつ男のスマホが着信を知らせた。
スマホの画面を確認した天使の笑顔をもつ男は、応答画面をタッチした。
天使の笑顔をもつ男がいう、「待っていたよ、連絡」
「待っていてくれて嬉しいわ、お待たせしたわね」、ウィッグの女が答える。

「なかなか面白い案件だったわ」、ウィッグの女がいう。
「どう面白い案件だったのか、教えてもらえるかな」、天使の笑顔をもつ男がいう。
「条件をお忘れかしら、1週間、私と過ごしたあとに教えるわ」、ウィッグの女がいう。
「わかった、今からいく、自宅を教えろ」、天使の笑顔をもつ男がいう。

「えっ、今から、明日の予定もあるし」、ウィッグの女がいう。
「期日指定の条件は聞いていない、今からがムリなら話はなかったことにする」
天使の笑顔をもつ男はきっぱりといった。
「わかった、わかったわよ」、ウィッグの女は自宅の住所を伝えた。

1週間後、都内にある高級マンションのベッドルーム。
「また会いに来てくれる」、ウィッグを外した女が男の胸から顔を上げずにいう。
天使の笑顔をもつ男は黙ったまま、天井を見ていた。
「いいわ、私が会いにいくから」、ウィッグを外した女は顔を上げずにいった。