2016年9月23日金曜日

銘柄を明かさない理由R138 You spin me round(後編)

第138話 You spin me round(後編)

その頃、淀屋と付き合っているモップちゃんこと無敗のテンは、1人考えていた。
リーダー、何かあったのかしら、社長室へ呼び出されるなんて。
もし運用成績のことで呼び出されたのなら、わたしにも責任がある。
いても立ってもいられなくなったテンは、席を立ち社長室へ向かった。

社長室のあるフロアへ着いたテンは、社長室に入る男を見た。
えっ、今のは淀屋さん、なぜ淀屋さんが社長室に。
淀屋さんが来るなんて聞いてない、テンの頭は混乱した。
しばらく考えた末に、テンはある結論を出した。

リーダーと淀屋さんが結婚することになり、偉い人に仲人をお願いしに来たんだわ。
そうだわ、そうとしか考えられない。
わたしというものがありながら、よりによってリーダーと二股かけていたのね。
こればかりはガマンできないわ、テンは意を決して社長室へ向かった。

「ちょっと、お待ちください、来客中です」
受付の前を、鬼のような形相で通り過ぎようとするテンに社長室秘書がいった。
「来客とは顔見知りよ、この花瓶借りるわよ」
テンは受付カウンターの花瓶を手に取ると、社長室のドアを開けた。

社長室に入ると、中にいた全員がテンを見た。
リーダーと淀屋は、並んでソファに座っていた。
2人の前のソファには、大きな男の人が座っている、おそらく仲人を頼んでいる人だ。
「やはり仲人を頼んでいたのね」、驚く淀屋の頭上でテンは花瓶を逆さにした。

1時間後、アルカディアにいる無敗のクイーンのところへ社長がやってきた。
「あの女性社員へのお咎めはなしだ、安心しろ」
無敗のクイーンは席を立ち、頭を下げていった。
「申し訳ありませんでした、わたしの管理不行届きでした」

「済んだことだ、会長は事情を聞くと、快く笑って許してくださったよ。
ところで、あの女性社員と淀屋氏はどこだ」、社長がたずねる。
「服を何とかするといって、淀屋氏を連れて早退しました」、無敗のクイーンがいう。
「浪花の相場師も、彼女の前ではただの男か」、社長は笑いながらいった。

同じ頃、都内の高級住宅地にあるテンの自宅。
「この娘が男の人を連れてきたのは初めてなんですよ、ゆっくりしていってくださいね」
料理本を見ながら悪戦苦闘しているテンの横で、テンの母親が笑いながらいう。
何でこうなんねん、タクシーで連れてこられた淀屋は居心地悪そうにソファに座っていた。