2016年11月19日土曜日

銘柄を明かさない理由R158 地獄を見た個人投資家たち

第158話 地獄を見た個人投資家たち

ある大学生は授業には出ず、その株をトレードしていた。
大学生はその株で数千万円の利益を出していた。
ある日のこと、株価が下がり、1日で数百万円の損失を確定した。
毎日、トレードしていればこんな日もあるさ、早目に損切りすれば大丈夫だ。

その日以来、負けることが多くなった。
騰がると思い買えば下がる、下がると思って売れば騰がる。
一時は数千万円あった利益はなくなり、今や元本を大きく割り込んでいた。
大学生は、大学から留年決定の通知が届いた日もトレードしていた。

ある会社員はマイホーム購入資金のほぼ全額で、その株を売り買いしていた。
株の儲けでマイホームが買えそうだ、会社員は勤務中も取引していた。
午前中に株を買い、午後になってから売る、たったそれだけで面白いように儲かった。
ある日の午後、会社員が株価を見ると大きく下がっていた。

会社員は慌てて売ると、数十万円の損失を確定した。
危ない、危ない、これからは頻繁に株価をチェックしないとな、会社員は思った。
やがて会社に勤務時間中の株取引が知られ、会社を懲戒解雇された。
元会社員は給与収入を失い、マイホーム購入どころではなくなった。

ある主婦は子供の教育費用に貯めた金の一部で、その株を売り買いしていた。
よかった、これからは節約しなくていいわ、主婦は散財を始めた。
古くなった家具や家電品を買い替え、外食や惣菜を買ってくることが多くなった。
やがて、支出が収入を上回るようになっていた。

ある日、主婦は取引で損切りした、たかが数万円の負けくらいどうってことないわ。
主婦は負けを取り戻そうと、1回当たりの取引額を多くした。
いつしか子供の教育費用に貯めた全額で取引するようになっていた。
ある日、取引用口座に入金しようと貯蓄用口座を確認すると、数千円しかなかった。

ある高齢者は退職金の一部で、その株を買い保有していた。
これで老後は安泰だ、高齢者は退職金の残りで趣味の盆栽を買い始めた。
ある日、その株の株価が大きく下がり、含み益がなくなった。
一時的な下げだ、すぐに戻るさ、高齢者は思った。

翌日、その株の株価は少し騰がった。
やはり、一時的な下げだったか、高齢者は安堵した。
次の日、その株の株価は大きく下がった、ここはガマンのしどころだ、高齢者は思った。
含み損の大きさに耐えられなくなり損切りしたとき、退職金は半分以下になっていた。