2016年11月25日金曜日

銘柄を明かさない理由R166 男女とオタク

第166話 男女とオタク

翌日から、赤い竜の会社の買い戻しが入り、連日、株価は上昇した。
損失を少なくしようと買い戻す、買い戻すと株価が騰がる。
赤い竜の会社の損失は、日に日に膨らんでいった。
アルカディアが上昇過程で得た利益は、すでにアルキメデスの損失を上回っていた。

ある日の午後、アルカディアを有する証券会社の社長室。
2人の男性と1人の女性が、ソファに座っていた。
2人の男性は、社長と情報システムの責任者の男。
1人の女性は資産運用部署、通称アルカディアの責任者、無敗のクイーンだった。

「今回の仕手戦で、我が社が勝てたのは2人のおかげだ。
本当にご苦労だった、全社員を代表して感謝する」、社長がいう。
「我々が最大の危機を迎えた中、救ってくれたのは横の男です。
この男こそ最大の功労者です」無敗のクイーンがいう。

「とんでもない、君たちの活躍があったからこそ勝てたんだ」
情報システムの責任者の男がいう。
ほう、めずらしい、プライドが人一倍高い者同士がお互いを称えている。
案外、似た者同士なのかもしれないな、社長は思った。

「話は変わるが、君たちは独り身だろう。
気が合うみたいだし、お互いを異性としてみるのもいいんじゃないかな」社長がいう。
「オタクのような男性は、生理的にムリです」無敗のクイーンがいう。
「気の強い女性は、男女として見てしまいます」情報システムの責任者の男がいう。

「誰が、男女だ」無敗のクイーンが立ち上がりいう。
「誰が、オタクだ」情報システムの責任者の男が立ち上がりいう。
「少しばかりPCに詳しいからって、偉そうにするんじゃない」無敗のクイーンがいう。
「PCはパーソナルコンピュータ、個人用だよ」情報システムの責任者の男が笑う。

「そんな嫌味な言い方するから、独身なんだよ」無敗のクイーンが笑いながらいう。
「あんたも独身だろ、もう少し女性らしくすればだな」情報システムの責任者の男がいう。
「オタク好みの女になるつもりはない」無敗のクイーンがいう。
「オタクじゃないっていってんだろ、この男女が」情報システムの責任者の男がいう。

2人の社員は社長に詰め寄っていった。
「と・に・か・く、こいつだけは異性としてみることはできませんから」
2人の社員の声は、見事にシンクロしていた。
「は、はい、わ、わかりました」社長は2人の社員の迫力にのけぞりながら答えた。